工場で音楽やBGMは必要?作業効率はかわるのか
工場のラインなどにBGMを導入して、作業効率の向上や環境改善に取り組んでいる企業はたくさんあります。その一方で「BGMがあると集中力が低下する」という声が聞かれることもあります。
今回は、工場にBGMが必要かどうか、作業効率の面から調べました。結論として、工場にはBGMの導入をおすすめします。作業効率の工場以外にもメリットがあります。あわせてまとめましたので、ぜひ参考にして下さい。
工場などの作業時に音楽を流すと良い効果がある?
作業が単調になりがちな工場などの現場作業を行う間、BGMを流すと生産性が上がるのがわかっています。これは実際に研究によって検証されていることです。
最初はアメリカで導入された
2007年、アメリカのスタンフォード大学において実証研究結果の論文が発表されました。BGMをかけていた工場では、労働生産性と相関関係があったとのことです。
これは、音楽がヒトの脳に作用して、集中力と学習能力を向上させる効果によるものだとされています。
また、第二次世界大戦中に、兵器開発のための工場で効率よく作業を行うべく「インダストリアルミュージック」と呼ばれるアップテンポの音楽が流れていました。
しかし、テンポが良すぎたため労働者たちが疲れてしまい、苦情が殺到しました。そこで、リラックスできるような静かな音楽も交えたBGMを使用しました。これが現代のオフィスBGMの始まりです。
工場にBGMはどうして必要か
BGMがもたらすのは生産性の効果だけではありません。従業員の精神面にも強く働きかけ、リラックス効果やモチベーションアップが期待できるためです。
具体的に必要な理由をご説明します。
集中力を高められる
繰り返し作業が多い工場のライン作業では、どうしても集中力が途切れてしまいがちです。集中力の欠如は生産性が低下するだけでなく、場合によっては事故など危険につながる可能性があります。
BGMをかけると意識が集中し、生産性が上がることがわかっています。工場内の雑音がBGMでかき消されるマスキング効果によって集中力が高められるため、目の前にある自分の作業を進めやすくなります。
リラックスできる
BGMには副交感神経を刺激する効果があることがわかっており、ストレスを軽減させてリラックスできる状態へと導いてくれます。
リラックスすることで従業員のストレスが減り、精神的な負担が少なくなるので、働きやすい職場へとつながります。働きやすい職場であれば離職率は低下しますし、仕事へのモチベーションも自然とアップします。
モチベーションアップする
作業の時にかかっているBGMを無意識に結びつける「関連付け」と呼ばれることが起こります。
BGMを聞いただけで無意識に仕事モードに切り替わり、作業に集中しやすくなるのです。作業に集中出来れば生産性も高まります。
一体感アップ
職場にお馴染みのBGMが流れていると「職場=そのBGM」と結びつきやすくなり、結果として組織の一体感を高める効果が期待できます。一体感が高まると仕事のモチベーションアップにもつながり、この面からも生産性の向上が期待できます。
科学的にも効果が証明されている
BGMで作業効率が良くなるから必要だ、というのは何となくそう感じているわけではありません。科学的な根拠が確かにあるのです。
生産性の向上
工場にBGMを流すと生産性が最大で11%近く上昇した、という英国産業衛生調査局による研究の報告があります。また、先ほど触れたようにスタンフォード大学による研究でも、労働生産性とBGMは相関関係にあることが示されました。
欠勤、早退、残業時間の減少
スティーブンス工科大学の研究結果によると、職場にBGMを流すことで欠勤は88%、早退は53%減少したことがわかっています。
また、日本では株式会社USENが行った調査によると、BGMをずっと流していることで残業時間の削減に効果があったとのことです。BGMのリラックス効果で居心地がよく、働きやすい職場づくりができると言えるでしょう。
どんな種類の音楽がおすすめ?
実際に工場でBGMを取り入れる場合、ただ音楽を流せば効果が出るわけではありません。種類によっては逆効果になってしまうこともあります。
ここで、BGMにおすすめの種類の音楽をご紹介します。特に単調になりがちなライン作業に最適です。
歌詞がないクラシック
音楽を聴きながら集中力を保つためには、歌詞がついていないものがいいでしょう。人の声が聞こえると、無意識に内容を聞こうとしてしまうためです。
逆効果になりかねないので、クラシック音楽やインストゥルメンタルのようなものがおすすめです。オーケストラや管弦楽曲など、馴染みのある有名な曲も取り入れてみましょう。
様々なテンポの音楽を組み合わせる
BGMのテンポは、作業スピードを左右する重要な要素です。だからといって作業の速さを求めてテンポの速い音楽だけを使うのはおすすめできません。
作業のスピードは速くなり生産性は高くなりますが、音楽に振り回されて疲れてしまう場合があるからです。焦りはミスの増加や事故にもつながりますので、メリハリをつけてスローテンポのゆったりした曲も組み合わせるのがおすすめです。
時間によって音楽を変える
工場向けのBGMとして提供される音楽では、作業の集中力を保てるように無音の時間と、BGMが流れている時間を繰り返すものがあります。
また、従業員の疲れ方に合わせた店舗のBGMが流れるように、一日を通してデザインされたものもあります。実際に効果があるように検証・管理されているので、より無駄がなく効率的にBGMの効果が期待できます。
BGMが良い効果をもたらした例
ここで、実際にBGMが従業員に対して、良い結果をもたらす具体的な例をご紹介します。作業する従業員当事者も、BGMに肯定的な意見が多いようです。
作業効率がアップした
大型の物流倉庫での作業にBGMを導入したところ、作業効率のアップのほかにストレスが軽減するといった効果も見られました。倉庫での作業は1件あたりにかけられる時間はわずかなため、無意識にプレッシャーにさらされがちでもあります。
テンポの良いBGMに合わせて作業ができるため効率アップし、音楽を聞くことでプレッシャーが軽減されてストレスが改善したためです。
リラックス効果でメンタルが安定
1958年、現パナソニックの工場でBGMが導入されると、ストレスを訴えて診療所にかかる従業員が30%も減ったそうです。また、アンケートとしては従業員の97%が作業時のBGMを続けて欲しいという結果になり、BGM自体にも人気があることがわかりました。
実際に働く従業員にも好評
パナソニックだけでなく、東芝、ポーラ、ソニーなど大手企業の工場でBGMが導入される事例が続いています。実際に現場で働く従業員からは「仕事が楽しくなった」「勤務時間が過ぎるのが早くなった」「欠勤が減った」と、いずれも好評の声が多く聞かれました。
まとめ
工場にBGMが必要かどうか、具体的な事例も合わせてご紹介しました。作業効率の改善や、従業員のストレス軽減のためにBGMの導入はおすすめです。
クラシック音楽や様々なテンポの曲を導入し、生産性の向上と従業員の精神的安定の両方の効果が期待できます。昔から国内外で科学的に証明されていることでもあり、大手企業の工場でも導入している事例があります。
作業効率アップと従業員の作業環境を改善するという両面から、ぜひ工場でのBGMの導入を検討してみてはいかがでしょうか。