健康優良法人になっても意味はない?有意義なものにするためにできること

公開日:2023/09/15   最終更新日:2024/07/25

健康経営とは、社員の健康を管理するだけではありません。生産性向上や社員の定着率向上にも貢献できます。健康優良法人になれば社外からも評価され、会社の将来に大きなメリットをもたらすのです。そこで今回の記事では、有意義な健康経営のためにできることについて解説しましょう。社内の労働環境を向上させたい人は参考にしてください。

健康経営は意味がないのか

健康経営しても、あまり意味がないと考える人もいるかもしれません。しかし、近年は健康経営に対する意識が高まっています。健康経営優良法人に対する認定制度も始まりました。まずは、健康経営や健康経営優良法人とはなにかについて解説します。

健康経営とは

健康経営とは、経営的な視点で社員たちの健康管理を考え、戦略的に実践することです。社員の健康増進を図ることで、経営面において大きな成果が期待できるという考え方です。アメリカの経営心理学者によって提唱された考えで、日本でも認知度が高まりました。

健康経営優良法人とは

健康経営に取り組む法人に対して、経済産業省では認定制度を設計しています。2017年にスタートした健康経営優良法人認定制度です。健康経営を実践している、とくに優良な大企業および中小企業などを顕彰します。

認定を受けた企業は、いわばホワイト企業と考えてよいでしょう。社員、求職者、関係企業、そして金融機関などから、企業価値を適切に評価されます。

さらに、ホワイト500、ブライト500は、大規模法人および中小規模法人において、それぞれ上位500の優れた法人に与えられます。健康経営優良法人に認定されるためには申請が必要です。

健康経営は株価にも影響する?メリットを見直そう!

健康経営に成功すれば、会社の業績にも影響を与えます。さらには、株価にもよい影響が出る可能性まであます。ここでは、健康経営を実践するメリットについて説明しましょう。

生産性や業績の向上

社員が健康でなければ、仕事に対するモチベーションや生産性が下がってしまいます。効率的に仕事をこなせず、結果的に残業が増えて、会社が支払う人件費が増えてしまうでしょう。

長時間労働などの過労が続くと、心身の健康を損ないます。無理な生活を続けて病気になってしまい、数週間から数か月間、療養のために休職してしまうリスクがあります。

近年はワークライフバランスやウェルビーイングという考えが広まったこともあり、健康経営に取り組む会社が増えています。会社が社員の心身を大切にする姿勢を示せば、社員のモチベーションが上がります。

職場の雰囲気も変われば、生産性だけでなく、創造性も上がるでしょう。健康経営は、社員のエンゲージメント向上に大きく貢献します。

優秀な人材の確保

少子高齢化が急速に進む日本では、働き手不足が社会問題となっています。そんな中でも、社員の健康を大切にする会社の姿勢は、求職者にもアピールできます。

仕事に没頭するだけの人生ではなく、余暇や家族の時間を大切したいと考える人も増えています。健康経営であるとアピールすれば、求職者が集まりやすく、優秀な人材を採用できます。

また、安心して働ける職場環境であれば、なかなか社員は退職を考えないものでしょう。退職希望者が減り、離職率の低下につながります。優秀な人材が他社に転職するのを防げるはずです。

社員定着率がアップすれば、生産性向上につながるでしょう。また、新規採用にかけるコストや手間を大幅に減らせます。

ブランドイメージの向上

健康経営に力を入れているなら、社員が働きやすい会社であると社外からも認識されます。結果的に会社としてのブランドイメージが向上するでしょう。

健康経営優良法人に認定されると、ロゴマークを使用できるようになります。魅力的な会社であると認識されるので、ステークホルダーとの関係が良好になると期待できます。

東京証券取引所では、経済産業省と共同で、健康経営銘柄を選定し、公表しています。2023年には31業種49社が健康経営銘柄に選ばれました。魅力ある会社として紹介されるので、投資家たちに企業価値を評価されるでしょう。結果的には株価の上昇も期待できるはずです。

インセンティブを受けられる

健康経営優良法人や健康経営に取り組む会社に対して、さまざまなインセンティブがあります。自治体や金融機関等において利用できるので、事業の拡大などに活用できるでしょう。

健康経営優良法人のデメリットはある?

健康経営優良法人のデメリットは、得られた効果を実感しにくい、社内へ浸透させるハードルが高い、手続きに手間がかかることが挙げられます。

ここでは、3つのデメリットについて詳しく解説します。

得られた効果を実感しにくい

健康経営の取り組みは目に見える成果がすぐに現れにくい特徴があります。たとえば、従業員の欠勤率が低下したとしても、健康経営の直接的な効果なのかほかの要因によるものなのかを判断するのは困難です。

健康経営の効果を正しく評価するためには、長期的な視点で成果を追跡し、定量的なデータを収集・分析する必要があります。具体的には健康診断の結果や生産性指標などを継続的にモニタリングし、前年度との比較や業界平均との比較を行わなければなりません。

また、従業員の健康意識や職場環境の改善度合いなど、定性的な評価もあわせて行えば、より効果的な測定が可能です。

このように健康経営は効果の実感がしにくい点がデメリットといえます。しかし、適切な評価方法を確立すれば、継続的な改善につなげられます。

社内へ浸透させるハードルが高い

健康経営を効果的に推進するためには従業員の理解と協力が不可欠です。しかし、健康経営の概念や具体的な施策を社内に浸透させることは容易ではありません。

とくに健康に対する意識が低い従業員や、業務が多忙で健康管理に時間を割けない従業員に対しては、健康経営の重要性を理解してもらう必要があります。

この問題に対処するためには、まず経営層が健康経営の意義を明確に示し、社全体で取り組みとして位置づけることです。また、従業員の年齢層や職種に応じて、健康経営の施策を柔軟にカスタマイズするのも効果的といえるでしょう。

たとえば、若手従業員向けには予防医学の観点から啓発活動を行い、管理職向けには部下の健康管理の重要性を強調するなど、ターゲットに応じたアプローチを採用すれば、社内への浸透を図れます。

さらに健康イベントの開催やインセンティブ制度の導入など、従業員が自ら進んで参加できる仕組みづくりも重要です。

手続きが手間がかかる

健康経営優良法人の認定を受けるためには、複雑な申請手続きを行う必要があります。手続きには、多くの書類作成や詳細なデータ収集が含まれるため、企業にとって大きな負担となる可能性もあるでしょう。

とくに中小企業や人事部門の人員が限られている企業にとっては、この手続きこそが健康経営への取り組みを躊躇させる要因になることがあります。また、認定は毎年更新する必要があるため、手間とコストが継続的にかかることを理解しなければなりません。

この問題に対処するためには専門的な知識を持つ担当者を育成したり、外部の専門家や認定支援サービスを活用したりすることが効果的です。さらに日頃から健康経営に関するデータを整理しシステム化すれば、申請時の作業負担を軽減できます。

2024年度健康経営優良法人の申請手続きと認定基準は?

2024年度健康経営優良法人の申請手続きと認定基準は、中小規模法人部門と大規模法人部門で異なります。ここでは、それぞれの申請手続きと認定基準について解説します。

中小規模法人部門の場合

中小規模法人部門の申請手続きは、まず健康宣言事業への加入から始まります。次に体制づくりを行い、健康経営のための取り組み、事務局への申請を行う流れです。

認定要件としては「経営理念・方針」「組織体制」「制度・施策実行」「評価・改善」に加えて「法令遵守・リスクマネジメント」の5つの領域で満たさなければならない項目をすべて満たす必要があります。

たとえば「経営理念・方針」では健康宣言の社内外への発信が必須項目となっており、「組織体制」では健康づくり担当者の設置が求められます。

「制度・施策実行」では定期健康診断の実施や受診率の把握、その結果に基づく保健指導の実施などが評価される形です。「評価・改善」では、健康経営の取り組みによる効果を測定し、PDCAサイクルを回すことが重要です。

大規模法人部門の場合

大規模法人部門の申請手続きは、まず健康経営度調査への回答から始まります。調査は企業の健康経営への取り組み状況を包括的に評価するものです。

調査回答後は認定基準の適合可否判定を受け、基準を満たしていると判断された場合に認定申請ができます。認定基準は中小規模法人部門よりも詳細かつ高度な要求が設定されており、「経営理念・方針」「組織体制」「制度・施策実行」「評価・改善」に加えて「法令遵守・リスクマネジメント」の5つの領域で評価されるのが特徴です。

各領域でより具体的かつ数値化された基準が設けられており、申請はこれらの取り組みを細かく記載した申請書と、証明書類を認定事務局に提出しなければなりません。

大規模法人は社会的にみて影響力が大きいため、より高度な健康経営の実践が期待されています。

従業員がやる気になる健康経営の3つのポイント!

従業員がやる気になる健康経営のポイントは、従業員について把握する、ターゲットを考えた施策を行う、取り組む背景を共有することです。

ここでは、3つのポイントについて解説します。

従業員について把握する

効果的な健康経営を実践するためには、まず従業員の現状を正確に把握する必要があります。健康診断データの分析だけでなく、従業員の生活習慣や健康に対する意識、仕事上のストレス要因などから情報収集を行いましょう。

従業員の現状をしっかりと把握できれば、個々のニーズに合わせた健康支援が可能となり、従業員の参加意欲を高められます。

ターゲットを考えた施策を行う

健康経営の施策を成功させるためには一律の取り組みではなく、ターゲットを絞った施策を展開するのが効果的です。

たとえば、若手従業員向けには生活習慣の改善に焦点を当てた施策を、中堅社員にはストレスマネジメントプログラムを、管理職には部下の健康管理スキル向上のための研修の提供が理想といえます。

ターゲットを考慮した施策は、従業員1人ひとりが「自分に合った」取り組みだと感じることができるため、結果として参加意欲と効果の向上につながります。ただし、特定の従業員グループに偏りすぎないよう、バランスの取れた施策展開を心がけましょう

取り組む背景を共有する

健康経営の取り組みを成功させるためには、取り組む背景や目的を従業員と共有しましょう。

なぜ会社が健康経営に取り組むのか、それによってどのような効果が期待されるのか、従業員個人にとってどのようなメリットがあるのかを明確に説明すれば、従業員の理解と協力を得やすくなります。

背景を共有すると健康経営が単なる「会社の施策」ではなく「自分たちの取り組み」として認識されるようになり、持続的な効果を期待できるでしょう。

健康経営は株価に好影響を与える!

健康経営は株価に好影響を与える可能性があります。ここでは主な理由について詳しく解説します。

健康経営は企業価値を向上させる

健康経営の取り組みは企業価値の向上に影響を与えます。なぜなら従業員の健康増進は、生産性の向上、欠勤率の低下、医療費の削減などを通じて、企業の収益力を高めるからです。

経済産業省の調査によると、健康経営度が高い企業ほど、ROE(株主資本利益率)やROA(総資産利益率)といった財務指標が優れている傾向が見られます。このように健康経営は企業価値の向上を通じて、株価に好影響を与える重要な経営戦略なのです。

健康経営銘柄の株式価値は高い

経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「健康経営銘柄」に選ばれた企業の株価は、市場平均を上回る傾向にあります。厚生労働省が発表した資料によると、健康経営度調査における上位評価20%の企業の株価時価総額は、TOPIX(東証株価指数)の平均を上回る水準で推移しています。

この結果は、投資家が健康経営を企業価値の重要な要素として評価している現れです。健康経営銘柄に選定されることは、企業の株式価値を高める重要な要因といえます。

健康経営を有意義なものにするためにできること

健康経営を実施している会社の中には、ただ健康管理するだけになっているケースもあります。また、すぐに健康経営の効果が実感できないケースや、社員に浸透しないというケースもあります。ここでは、健康経営をより有意義なものにするために、どんなことができるのか説明しましょう。

経営者が発信する

健康経営を実現するときは、経営者自身が社内外へ向けて、健康経営についてメッセージを発信しましょう。なぜ自社に健康経営が必要なのか、実施する理由や期待できる結果を社員に向けて説明する必要があります。

社員を大切にする会社であると発信することで、健康経営への社員たちの関心度も高まります。禁煙をすすめたり、運動を奨励したり、メンタルヘルスの向上を図りましょう。

また、経営者自身が、健康維持や増進に向けて努力している姿を、社内に発信することも効果的です。社員の健康リテラシーが高まり、自分自身の生活習慣を見直すきっかけになるでしょう。

自社のゴールを明確にする

健康経営を目指しているものの、ゴールがあいまいになっているケースも見られます。健康経営を始めるときは、自社が目指すべきゴールを設定しましょう。

健康経営のゴールとは、自社が抱えている経営課題が解決した状態のことです。ですから、優先して解決するべき経営課題を洗い出す必要があります。離職率の低下、長時間労働の解消、メンタルヘルスの改善といった、いま会社が抱えている課題に合ったゴールを設定します。

また、ゴールはあいまいな言葉ではなく、数値で評価できることが理想です。たとえば、社員の検診受診率の向上といったように、数字で結果がわかるようなゴールを設定しましょう。

また、企業理念や経営課題と、ゴールが矛盾しないように気をつけてください。さらに、設定したゴールは社員と共有することが重要です。社員たちがゴールをはっきり理解できれば、それぞれの意識が変わり、日々の行動が変わるでしょう。

定期的な改善

健康経営をスタートさせても、効果がすぐに表れるわけではありません。また、ゴールを目指す中で、すべてがスムーズにいくとも限りません。

そのため、健康経営を実施していく途中で、定期的に振り返る作業は欠かせません。PDCAサイクルで現状をチェックして、改善することが大切です。中長期的な視点で取り組み、途中で課題が見つかったなら修正する必要があります。

まとめ

今回は、健康経営を有意義なものにするポイントについて解説しました。近年はワークライフバランスという言葉が広く知られるようになり、働きながら健康的な生活を送る意識が高まっています。

とくに2020年のパンデミックを経験したことで、働き方の意識も大きく変わったといえます。会社が健康経営に取り組めば、社員たちの生産性やモチベーションが向上します。

求職者にも魅力的な会社と認識され、優秀な人材を確保できるチャンスが生まれるはずです。結果的に業績アップにつながり、株価にも好影響を与えるでしょう。健康経営を実践するときは、ぜひ今回紹介した方法を参考にしてください。

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