オフィスBGMを導入する前に知っておくべき「モーツァルト効果」とは?

公開日:2022/04/01   最終更新日:2022/04/21

BGMを取り入れることで、仕事にもよい影響があることはよく知られており、あらゆるBGM向きの音楽がある中でクラッシックはおすすめのジャンルの一つです。中でもモーツァルトの音楽は仕事のパフォーマンス向上と相関があるとされ、モーツァルト効果と呼ばれています。BGMを導入する前に、この効果への理解を深めておきましょう。

モーツァルト効果とは?

モーツァルトの音楽を聴くことで心や体によい影響が表れることをモーツァルト効果と呼び、仕事のパフォーマンス向上やストレス軽減への効果も期待され、オフィスなど職場のBGMとしてもモーツァルトが取り入れられています。

クラシック音楽には、脳をリラックスさせα波の発生を促す1/fゆらぎを含む楽曲が多く、オフィス空間のBGMとして最適なジャンルの一つです。聞きなれない言葉だと思いますが、1/fゆらぎとは川のせせらぎや波の音、炎のゆらぎのような自然界の現象にみられる不規則なゆらぎのことで、人の心に安らぎや心地よさをもたらします。

モーツァルトの音楽にも1/fゆらぎが多く含まれていますが、モーツアルト効果の要因はそれだけではありません。その秘密は周波数にあります。ゆらぎと周波数がなぜ仕事によい影響を与えるのでしょうか。

まずはゆらぎとα波、自律神経の関係についてご説明します。1/fゆらぎがもたらすリラックス状態はα波という脳波を導きます。α波は睡眠と覚醒の中間くらいの状態で発生する脳波で、集中力が高まっている時にも発生することから、仕事の効率アップにも影響があると考えられます。

α波が出ている時は、身体のあらゆる機能を調整している自律神経のうちリラックス状態を司る副交感神経が、緊張状態を司る交感神経よりも優位に働きます。この状態ではリラックスや安心感、幸福感につながるホルモンが分泌され、仕事面では過度な緊張状態の緩和やストレス軽減が期待されます。

次に周波数の脳への影響についてご説明します。早くからモーツァルト効果に注目していたフランスの耳鼻咽喉科医、アルフレッド・A・トマティスは、周波数と脳から脊椎にある骨格部位が対応していることに気付きました。延髄から上の脳神経系は、およそ4,000Hz以上の高周波音に対応し、頸椎は2,000から3,000Hz、胸椎は800から2,000Hz、腰椎から仙椎は125から800Hzの周波数に対応しているのだそうです。

モーツァルトの音楽、とくにバイオリン曲やピアノ曲は3,500Hz以上の高周波の音を豊富に含んでいます。また倍音の効果で15,000Hz以上の楽曲もあり、延髄から大脳にかけての脳神経系が刺激され脳に影響を及ぼしますこのことにより、仕事にもよい効果が期待されるというわけです。

モーツァルト効果に関する実験

モーツァルト効果という言葉は、1991年に出版されたフランスの耳鼻科医アルフレッド・トマティスの著書により最初に世に出ました。その2年後の1993年に、カリフォルニア大学アーバイン校の心理学者フランシス・ラウシャーらによって、有名な学術誌「ネイチャー」に「音楽と空間的課題の遂行成績」という短い論文が掲載され、モーツァルト効果が広く知られていくきっかけとなりました。

論文の実験では、モーツァルトの「2台のピアノのためのソナタK.448」を聴かせた学生、他の音楽を聴かせた学生、何も聴かせなかった学生に分けて空間認知のテストを行った結果、モーツァルトの楽曲を聴かせた学生の方が優秀な成績をおさめたのだそうです。

これにメディアが反応し、新聞などで拡散されて、モーツァルト効果が世間に広まっていきました。このラウシャーが発表したモーツァルト効果について真偽を確かめようと、その後もいろいろな研究が行われましたが代表的なものにラットを用いた研究があります。

モーツァルトを聴かせたラットと、他の音楽を聴かせたラットにT字型迷路を脱出する速度を競わせるという実験ですが、結果はモーツァルトの音楽を聴いたラットの方が、早く迷路を脱出できました。このことにより、モーツァルトの音楽が、ラットの脳に影響を及ぼし、活性させたことが証明されました。

反対にモーツァルト効果に対して否定的な立場での研究も行われており、モーツァルトに限らずほかの音楽でも脳によい影響があるとする研究結果も発表されています。

今もモーツァルト効果については研究が行われおり、認知機能に直接的な影響を及ぼすということは定説とはなっていませんが、音楽が聴く人の気分や感情に何らかの影響を及ぼすことは広く認められています。このことが脳の認知機能向上に間接的に関わっているということも考えられますので、一定の効果は期待できるでしょう。

オフィスBGMにモーツァルト効果を取り入れた企業の事例

ゆらぎや周波数によって脳に働きかけ、集中力や仕事のパフォーマンスを上げる効果が期待できるモーツァルトの音楽ですが、オフィスでBGMとして活用した場合にはどのようないい影響が表れるのでしょうか。ここでは、実際に職場にモーツアルトの楽曲を導入した企業の事例を見ていきましょう。

オフィスBGMにモーツァルト効果を取り入れた企業では、鳥取県米子市にある東京印刷が有名です。東京印刷では仕事のパフォーマンス向上につながることを期待して、モーツァルトの楽曲を常時、オフィスと工場のBGMとして取り入れています。その結果、1年経過していろいろな効果が表れたのだそうです。以下がその具体的な事例です。

・損失金額が1/10以下に減少した。
・印刷ミスが1/7も減少した。
・社員の欠勤が少なくなった。
・工場の事故が少なくなった。
・機械の故障が少なくなった。
・デザイナーたちのデザインが褒められるようになって、コンテストでもよく入賞するようになった。
・印刷の仕上がりがよいため注文が増えた。
・訪れる人が増えて、会長の周りに常に多くの人が集まるようになった。

いかがでしょうか。モーツァルトの音楽を職場で流すことで、こんなに素晴らしい影響が表れたというのだから驚きです。どの事例からも、従業員が活き活きとして、集中力高く働いているシーンが想像され、そのことによる結果だといえるのではないでしょうか。

モーツァルトの音楽を聴くことによって、リラックスしつつも覚醒しているような、いわゆるゾーンに入っているような状態に近づくことができるのかもしれませんが、そこまではいかなくても、やはり脳に何らかのよい刺激を与えているといえるでしょう。

この東京印刷の好事例は評判となり、米子市の他の企業や、バラ農家、酒蔵、専門学校など多方面に広がり、それぞれの現場からは集中力が増した、疲れにくくなった、落ち着いた雰囲気になった、効率が上がったなどのよい結果が報告されています。

モーツァルト効果によって得られるメリット

気分や感情などの心理面や脳に影響を与えるモーツァルトの音楽を、オフィスBGMとして流すことで得られるメリットは多岐にわたります。

また、モーツァルトの音楽は1/fゆらぎによるリラックス感がもたらすα波の発生と副交感神経を優位にする作用、高い周波数による脳神経への刺激がその効果でしたね。このことはまた、適度にリラックスしながらも脳が活発に働いている状態であるともいえるでしょう。

クラッシックのような心地よい音楽をBGMに取り入れることで得られる代表的な効果3つ、モーツァルト効果に着目した場合さらに期待できる効果4つを確認しておきましょう。

マスキング効果

BGMがほかの音を隠す効果のことをマスキング効果といいます。耳障りのいい音楽が流れていることで、周りの人の話し声や雑音が気になりにくく、居心地がよく感じられますが、オフィスだと、電話や打合せの話し声や、パソコンのキーボードの音などがその対象となります。

イメージ誘導効果

BGMは空間のイメージに大きな影響を与えます。仕事に集中して張り詰めた空気になっている場合などは、無音だと緊張感が漂い、リラックスしている場合よりも仕事にパフォーマンスが落ちることが想像されますが、優雅なクラシックが流れていることで、適度に緊張感ほぐれ、場の雰囲気が和らぐことが期待できます。

感情誘導効果

BGMによりオフィスのイメージが変わることは、働く人の気分を変えることにもつながります。にぎやかでアップテンポな曲がかかっていると、職場の雰囲気は明るくなるかもしれませんが、仕事にとことん集中するという気分にはなりにくいものです。その点優雅でしっとりとしたクラシックだと、リラックスしつつも落ち着いて集中するモードに気分を切り替えることができます。

緊張する仕事への効果

次にモーツァルト効果に着目した効果です。会議での発言やプレゼンの前の過度な緊張を和らげ、適度な緊張感を保ちつつ、落ち着いた状態を促します。

■クリエイティブな仕事への効果

単に集中するだけではうまくいかない、適度なリラックスと覚醒が必要な想像力を発揮する仕事にも効果を発揮します。

■対話力向上への効果

相手の話を感情的にならず冷静に落ち着いて聞き、要点を把握し、的確な判断を下すといった対話レベルの向上にも期待ができます。ミスをして叱られているときや、対面すると緊張してしまう苦手な相手との会話のシーンでも冷静でいられるかもしれませんね。

■スピードアップの効果

集中力が高まることで、業務効率が上がるだけではなく、ミスの軽減にもつながります。単純作業の場合は曲調が変化することによる気分の変化ということも、副次的な効果として期待ができます。

 

今回はオフィスBGMを導入する際に知っておきたいモーツァルト効果についてご説明しました。モーツァルトの音楽には単に雰囲気をよくするだけではなく、心理面や実務面であらゆる効果が期待できることがご理解いただけましたでしょうか。BGMを選定する際にはオフィスという場所の特性を考慮して、ぜひモーツアルトの音楽を取り入れることを検討してみてください。

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