飲食店でBGMを取り入れるときに注意するべきポイントとは?

公開日:2023/01/15  


店舗でのBGMはお客さんに対して大きな影響を与えます。気に入らないBGMを流すと店離れが加速してしまううえ、逆に心地のよい音楽を聴けば、店舗にいる時間が伸び、売り上げ向上が期待できます。ということで今回は飲食店でのBGMの選び方にあわせて、BGMの重要性と効果、BGMを流す際の注意点などをお伝えします。

飲食店のBGMの重要性

BGMには多くの作用があり、店内でBGMをかけることによってお客さんの行動や感情をコントロールできます。ここでは飲食店のBGMの重要性について解説します。

飲食店のBGMの効果

飲食店のBGMの効果には大きく2つの効果があります

・聴覚的マスキング
・感情誘導効果

それぞれ解説します。

・聴覚的マスキング

1つ目は聴覚マスキングです。聴覚マスキングとは周囲の雑音や話し声を聞こえにくくすることを意味します。店内が無音の環境である図書館と、色々な音がしているショッピングモールなどでは、断然ショッピングモールのほうが話しやすいですよね。そのため、BGMはさまざまな環境で利用されています。では飲食店ではどうでしょうか?飲食店でBGMを流し聴覚マスキングを行うと、無音の状態に比べて話しやすくなります。そして話しやすくなると会話が続くことから、商品を頼む数に違いが出てきます。たとえば食事が終わった後のデザートや、食後のコーヒーなどはとくに頼まれるでしょう。これが飲食店でBGMを流す1つ目のメリットです。

・感情誘導効果

2つ目に感情誘導効果について解説します。感情誘導効果とはBGMによって人の感情が変化することです。“ゆったりとした音楽を聴くとリラックスする”“アップテンポな曲を聴くと気分が上がる”などは感情誘導効果によるもので、カフェや病院、繁華街などでも利用されています。また感情誘導効果をうまく使うと、高単価のものを買いやすくさせたり、客の滞在時間を伸ばしたりする効果が期待できます。具体的なBGMの選び方については次の“飲食店で流すBGMの選び方”を参考にしてください。

飲食店で流すBGMの選び方

ここからは飲食店で流すBGMの選び方を解説します。

感情を利用したBGMの選び

飲食店のBGM選ぶ際には、先ほど紹介した感情誘導効果を利用するとよいでしょう。BGMを活用すれば客の滞在時間を伸ばしたり、食事の量を増やしたりできます。あるスーパーマーケットで行った実験では、店内にローテンポのBGMを流すか、アップテンポのBGMを流すかについて調査しました。すると、スローテンポの曲を流した方が客の移動スピードが17%低下し、売り上げが全体の40%程度上昇したのです。

また、レストランでも同様の実験を行ったところ、テンポの遅いBGMを流すと食事を摂るスピードが低下し、客の滞在時間が伸びたためにドリンクやアルコールの注文が増え、売上の向上につながりました。以上の結果から感情誘導効果を利用しBGMを選ぶ場合には、以下のような点を考慮して曲を選択しましょう。

・アップテンポな曲:滞在時間を伸ばさないため店の回転率が向上
・スローテンポな曲:滞在時間が伸びるため客単価が向上

また、音楽にはメジャーコード(明るい音楽)とマイナーコード(暗めの音楽)の2種類があり、マイナーコードでスローテンポな曲を流すと高単価の商品が売れるという論文もあります。この理由としては、マイナーコードの音楽は雰囲気が暗いため、客の気分が低下気味になり、お金を浪費しやすいからだといわれています。

演出したい雰囲気から選ぶ

感情誘導効果を利用してお店の利益を出すのもよいですが、それ以上にお店の雰囲気を作るのがBGMの役割だったりします。暗めの内装で高級感があるバーで、客の回転率を上げるためにアップテンポで元気な曲はかけませんよね?それだけBGMとお店の雰囲気は深く関係しています。ここからは演出したい雰囲気に合わせた音楽の選び方を紹介します。

・楽しさ・愉快さ・元気さ

楽しさや元気さを演出したい場合には、流行りのJ-POPやK-POPなどが候補として上げられます。客層に若者が多い場合にはとくにおすすめです。しかし、J-POPやK-POPなどの音楽には歌詞が入っているため、客の会話の邪魔をしたり、接客のしにくさにつながったりします。加えて流行の曲では好き嫌いがきっちり分かれていることも多いので、BGMが合わない客はすぐに帰ってしまう可能性もあります。

そんなときはアップテンポなジャズやボサノバがよいでしょう。ジャズやボサノバであれば歌詞が入っていないため、会話の邪魔にもなりにくいうえ、なにより人の好みにそれほど影響しません。またジャズやボサノバではカフェからレストラン、おしゃれなチェーン店であっても利用できるため、汎用性が高いこともジャズやボサノバをおすすめする理由です。

・高貴な雰囲気・格式の高さを強調

高貴な雰囲気を演出したい場合には、クラシック音楽がおすすめです。高級レストランやディナー専門店などのリッチな雰囲気がするお店では、店内の内装と合わさってより高貴なイメージを増幅させられます。選曲についてですが、BGMで選曲する場合には,暗くなるような(『魔王』や『運命』など)マイナーコードのクラシックは避け、ピアノや弦楽器がメインでゆったりとした雰囲気の曲(『ターフェル・ムジーク』や『セレナーデ』など)をセレクトしましょう。

飲食店でBGMを流す方法

飲食店で流すBGMのイメージについてお伝えしたので、次は実際に店舗での利用方法について解説します。

CDやダウンロードコンテンツ

一番手っ取り早く音楽をかける方法として思いつくのが、CDや自身で利用しているサブスクなどから直接流す方法です。ただ、この方法は日本音楽著作権協会(JASRAC)によって管理されているケースがあり、知らぬ間に著作権侵害に該当する可能性があります。

そのため、著作権侵害にならないようにJASRACとBGM利用許諾契約を結ぶ必要があるので、注意しましょう。JASRACの手続きに関しては次項の“飲食店でBGMを取り入れるときに注意するべきポイント”をご参照ください。

有線放送

有線放送とは、電波ではなくコードを利用してBGMを流すサービスです。有線放送のメリットは電波障害がないことや、音質がよいこと、そして著作権侵害にあたらない点です。先ほども紹介したとおり一般的な曲には著作権があり、使用したい音楽が合った場合にはその都度、利用許諾契約を結ぶ必要があります。しかし、この方法では一日に何十曲も流す飲食店にとって合理的な方法ではありません。

一方、有線放送であれば著作権に関する手続きは有線放送の会社が代行してくれます。著作権を考慮せずに好きな曲を流せるのは有線放送の魅力といえるでしょう。

専用アプリ

「有線よりも無線がよい!」という方は、専用アプリの利用がおすすめです。Wi-fiがあれば音楽を流せるため、現代のインターネット環境であればどの店舗でも利用可能でしょう。専用アプリも著作権侵害には当たらず、曲数も有線放送より多いことがメリットです。

飲食店でBGMを取り入れるときに注意するべきポイント

ここからは飲食店でBGMを取り入れる時の注意ポイントについて解説します。著作権(JASRAC)の手続きも解説するので、ぜひ参考にしてください。ここではオンライン上で手続きする方法について解説します。

著作権(JASRAC)の手続き

初めて申し込む方を対象に、手続きの方法を紹介します!

・JーTAKTで申込み

JASRACで著作権申請を行うには「J-TAKT」から申請を行います。J-TAKTのHPに行くと個人利用と企業・個人事業主、教育機関、非営利団体と分かれているので、当てはまるものを選択し、質問内容に回答しましょう。

・基本契約書を送る

手続きが完了したら、次は基本契約書をJASRACが指定する郵送先に送ります。なお基本契約書は初回のみで、2回目以降はJ-TAKTからの申込で申請ができます。

・サービス概要書

楽曲の使用目的が分かるよう、文章や資料を用意しメールで送信します。特定の書面があるわけではないので、お好みの方法で作成して問題ありません。サービス概要書に記載する項目は以下のとおりです。([1]より引用)

・サービス全体の概要
・課金する場合にはその課金方法
・広告料がある場合はその内容
・リクエスト回数のカウント方法と証憑方法
・転送や複製が不可能な場合はその旨とその方法
・配信開始当初の配信予定楽曲数とJASRACが著作権を管理している楽曲を利用することをあらかじめ確認できる画面のキャプチャ
・許諾通知

サービス概要書を提出し、10日~2週間程度で申請が完了すれば、店舗内でBGMを流す準備は完了です。その際JASRACから許諾番号と許諾マークがメールにて配布されるため、HPのトップページに掲載しておきましょう。

・支払い

利用開始後には利用曲目と収入の報告が必要です。詳しい内容に関してはJASRAC公式ページを参照ください([2]が参考ページになります)。

自分の好みを流し過ぎない

飲食店でBGMを流すうえで注意したいことは、自分好みの曲を流し続けないことです。BGMには雰囲気を作り出す効果があるため、どんなに自分が好きでも店舗にマッチしていなければ意味がありません。また自分好みの曲をセレクトすると、好きなアーティストが偏ってしまうため、曲調にも広がりがなくなってしまいます。そのため飲食店でBGM流すなら、自分の好みはほどほどにし、店舗の雰囲気に合った曲をセレクトするようにしましょう。

スピーカーの設置場所

スピーカーの設置場所もBGMを流すならこだわりたいポイントです。飲食店は広いため、スピーカーは一つではなく複数個設置するのがよいでしょう。スピーカーの位置の理想は、どの席に座っても同じボリュームで音楽が流れていることです。「スピーカーの位置なんて分からない!」という方は、建築士や音響の専門家に相談し、店内のスピーカー配置を検討してもらうことをおすすめします。

まとめ

今回は飲食店でBGMを流す際の注意点と、BGMを選ぶポイントやメリットについて解説しました。BGMには周囲の音を聞こえにくくするマスキング効果と感情誘導効果の2つがメリットとして挙げられます。また、飲食店のBGMは選び方ひとつでお店の雰囲気を作り出し、お客さんの満足度を変化させます。店舗に合わせたBGMを選んで、お店をよりよくしてみてください。

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