オフィスBGMを導入する際に注意するべきポイントとは?
従来、職場は単純に仕事をするスペースとして認識されている傾向にありました。しかし、時代の変化に伴い、職場環境を充実させたいと考える企業が増えています。そして、就労環境を充実させる手段に、音楽を流すという選択肢があります。本記事では、企業が職場に音楽を導入する際の注意点について紹介します。
静かすぎる職場は逆に業務効率を下げる?
従来、職場は仕事ができるスペースがあればよいと考えられている傾向にありました。しかし、近年では、企業が就労環境の充実化に力を入れています。
職場の環境が充実していると、従業員のモチベーションが向上したり、職場全体のイメージがよくなったり、さまざまなメリットがあると考えられるようになっているからです。そのため、最近ではあえて休憩室を設置して社員がリフレッシュできる空間を採用したり、フリーデスクを採用したりするケースが増えています。
フリーデスクとは、社員ごとに固定のデスクを定めず、どこでも自由に仕事ができる仕組みのことです。一人で集中したい場合は一人の空間、グループで相談しながら企画を進める場合は複数人用のデスクといったように、仕事内容や気分に応じてデスクを選択できるのです。つまり、どのような就労環境が従業員にとってよいかを考え、設計やデザイン、環境を工夫するのが主流となりつつあるのです。
そして、就労環境に対する価値観の変化に伴い、職場に音楽を流そうとする企業が増えつつあります。しかし、仕事場は静かである方が働きやすいと考えている方も多いのではないでしょうか。一見すると、静かな環境でパソコンに向き合いながら仕事をしているのは、従業員が集中して作業しているように見えます。
ただし、あまりにも静かすぎる仕事場は、かえって作業効率を下げてしまう可能性があるのです。たとえば、エレベーターの中や緊張感のある会議前は、空気が静まりかえって話しにくくなります。静かすぎる空間は、他の人に会話が聞こえてしまう、会話の音が迷惑になってしまうなどと感じられてしまうからです。
つまり、適度な雑音のない空間は、話しにくい空間を作り上げてしまうのです。職場環境においても同様に、パソコンを打つ音やコピー機の稼働音しか聞こえない空間は、社員同士のコミュニケーションが取りにくい空間になっているといえます。
一方、人同士が会話し、心地のよい曲の流れるカフェでは、仕事に集中できる方も多いのではないでしょうか。適度な雑音がある上に、リラックスできる曲が流れているため、相乗効果によって集中できる環境になっているのです。
オフィスBGMに期待できる効果
一般的に、デスクで作業をするような職場は静かであるべきだと考えられている傾向にあります。しかし、どんなに静かな空間にしようと工夫しても、周囲の音やコピー機、パソコンの作業音は発生してしまいます。
そして、静かな空間を作ろうとしている中に、何かの機械音や周囲の音はあると、雑音に感じられてしまうでしょう。雑音は不快であることはもちろん、作業に集中できなくなり仕事の効率を低下させてしまいます。雑音が気になって集中できないという経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。
また、静かにしようとしている空間は、周囲の目が気になってコミュニケーションを取りにくくなってしまいます。つまり、職場が静かすぎると、コミュニケーションが活発でなくなることに加え、雑音が気になる空間になり、かえって作業効率を低下させてしまう可能性があるのです。
そこで、最近では職場に音楽を流すことが注目されています。まず、職場に何らかの曲が流れていると、不快に感じやすいキーボード音や機械音などの雑音が感じられにくくなります。マスキング効果と呼ばれ、周波数の近い音量を流すと、音が相殺されることでノイズが気にならなくなるのです。ただし、流す音量が大きすぎると周波数が合わなくなるので注意しましょう。
また、きちんと選曲することで、心理的にもポジティブな効果をもたらします。音楽は聞く人に影響を与えます。たとえば、音楽によって、心が落ち着いたり、モチベーションが上がったりする効果が期待できるのです。
そこで、職場でも目的に応じて曲を選ぶことで、よい心理的効果が期待できます。たとえば、仕事に集中できる環境にしたい、空気を明るくしたいなど目的を明確にして曲を探すとよいでしょう。
その他、曲を流すことで時間管理の効果も期待できます。たとえば、就業前、午前、昼食、午後、定時後といったように、時間ごとに曲を変更することで時間を知らせることができます。時計を見て判断することもできますが、曲によって常に時間に対する意識が持てるようになり、タイムマネジメントの効果が発揮できるのです。
ただし、個人で好きな音楽を聞くのとは異なり、社員全員のことを考え、目的に応じた曲を選ぶことが重要です。
オフィスBGMの導入は意外と簡単!
就労環境を整えるために音楽を導入したいと思っていても、そもそも導入方法が分からないケースも少なくないでしょう。導入方法にはいくつか選択肢があるため、企業に合う方法を選択するのがおすすめです。
また、ほとんどの音楽には著作権が存在しています。著作権のある音楽を流す場合、基本的に許諾申請をする必要があります。ただし、利用方法によっては申請が不要な場合もあります。
たとえば、企業の場合、従業員が主に利用するのか、来客が多い場所で利用するのかによっても申請の必要性が変わります。また、万が一、著作権侵害だと判断されてしまうと、法人は3億円以下の罰金という重い刑罰を受けることになってしまいます。
さらに、どのような仕組みでシステムを導入するのかによって、著作権対策の方法が異なります。つまり導入するシステムは、著作権対策の方法も考慮した上で検討するとよいでしょう。
■企業を専門に音楽を提供している企業と契約する
専門の業者と契約すると、プロに最適な音源を選んでもらえます。たとえば、リラックスできる空間ややる気がアップする空間にしたいなどと注文すると、ぴったりの曲を選んでもらえるでしょう。何を流せばいいのか分からない方は、プロに相談してみるのがおすすめです。
さらに、業者に依頼することは著作権対策に手間がかからないことも大きなメリットです。ただし、業者に依頼するとある程度費用がかかってしまう点はデメリットでしょう。
■配信サービスを利用する
配信サービスを利用するのも選択肢の一つです。企業だけに限らず、日常的に音楽を聞く方法として、個人でも利用している方が多いでしょう。大手の音楽会社がサービスを運営しているケースが多く、月額費用を支払うとサービスが利用できます。Jポップや洋楽を始め、ジャズやボサノバなど幅広いジャンルの音楽が展開されています。また、企業向けの曲を中心に配信しているサービスもあります。
■ラジオ放送を流す
企業の中にはラジオ放送を流す企業もあります。どのようなチャンネルを設定するかによって流れるラジオの内容が異なりますが、ニュースや広告が流れてしまうこともあるでしょう。また、曜日や時間帯によってさまざまな内容が配信されます。そこで、ラジオ放送は社員食堂や休憩室など流す場所を選んで活用するのがおすすめです。
■無料のサービスを利用する
インターネットにアップロードされている無料の音楽を活用する方法もあります。ただし、途中で広告が流れたり、プレイリストの内容が終了すると曲が止まってしまったりすることがあります。費用をかけたくない場合は無料のサービスがおすすめですが、利便性とのバランスを考慮するのが重要です。また、著作権にも注意するようにしましょう。
オフィスBGMを導入する際に注意するべきポイント
企業が職場で曲を流す際、著作権侵害にならないようルールに従って流すことが重要です。また、著作権に関することはもちろん、音量と選曲にも注意するようにしましょう。
まず、音量は大きすぎないように設定するのがポイントです。なぜなら、音量が大きすぎるとマスキング効果を発揮できなくなるからです。マスキング効果を発揮するには、雑音だと感じられる音と周波数がおおむね同じである必要があります。音が大きすぎると、雑音に音がプラスされてしまい、かえって不快に感じてしまうでしょう。
また、選曲にも注意点があります。一般的に、企業に適しているのは流れていても気にならない曲です。たとえば、誰もが知っているJポップのヒットソングが流れていると、ついつい聞き入ってしまい作業の手が止まってしまうでしょう。そのため、ジャズやボサノバ、歌詞がなく楽器だけで演奏されているインストゥルメンタルなどが職場では定番です。
ただし、仕事に集中する必要のない社員食堂ではミドルテンポのインストゥルメンタルやクラシックを流している企業もあります。また、従業員の休憩スペースやトイレなどの空間は、水の流れる音や波の音、鳥の鳴き声などリラックスできる音を流している場合もあります。職場といってもさまざまな空間があるため、シーンに応じて選曲を分けることも選択肢の一つなのです。
また、時間で曲を分けるという選択肢もあります。たとえば、就業開始前は気分の上げやすいアップテンポのものを流す工夫をしているケースがあるのです。つまり、職場に曲を流す場合は、著作権や音量、選曲に注意することが大だといえるでしょう。
就労環境に対する考え方の変化に伴い、職場にBGMを流すケースが増えています。ただし、単純に音楽を流すのではなく、目的に合う選曲や音量を設定する必要があります。選曲や音量が適していない場合、かえって従業員の集中力や作業効率を低下させてしまう可能性があります。
また、ほとんどの音楽には著作権が存在しています。万が一、著作権侵害に該当してしまうと、重い罰則があります。そこで、きちんと著作権に関するルールを理解し、必要に応じて申請をした上で音楽を流すようにしましょう。