オフィスで流すBGMにクラシックを選ぶメリットとは?
近年、オフィスでBGMを流す企業が増えつつあります。職場は静かであるべきという強い認識がありましたが、とくにクラシックのBGMで得られる効果が人の脳や心によい影響を与えることが分かったためです。今回、オフィスBGMが人に与える効果と、クラシックが人に与える影響を紹介します。業務効率アップをはじめとした効果が期待できるでしょう。
オフィスで流すBGMにクラシックを選ぶメリット
図書館のような静けさがあるオフィスは珍しくはありません。しかし、静かな空間が苦手な人や、静かな空間で声や音を立てることを避けたい人もいます。静かすぎる空間では集中しにくいという意見もあるようです。
ところが、パソコンのキーボード音や書類をめくる音が響く静かなオフィスにクラシックが流れると、その雰囲気は一変します。クラシックは、複雑な音の重なりやメロディで構成された音楽です。オフィスBGMとしてクラシックを流すことで“気分が落ち着く”“集中力が上がる”“仕事の質が上がる”という恩恵を得ることができます。適度な音は、静かな空間よりも多くの恩恵を受けることができるのです。
さらに、音楽は個人の好みだけでなく、聞く人の年代や性別による影響も大きく受けると考えられます。聞く人を選ばないクラシックをBGMに選ぶことで、多くの人に受け入れられやすく、オフィスBGMとしてはやく馴染むことができるでしょう。
そもそもオフィスにBGMを流すメリットとは?
快適なオフィス空間をつくることを目的に、オフィスBGMが導入されます。日本ではオフィスBGMを導入している企業は少ないものの、下記の7つのメリットにより、徐々にオフィスBGMの導入が検討しているようです。
業務効率向上
音楽は人の行動に影響を与えます。アップテンポのBGMを聞くと作業が迅速になり、モチベーションアップが期待できるでしょう。就業時や昼休みといった、気持ちが緩みがちな時間帯にアップテンポのBGMを流す企業も多いです。
セラピー効果
落ち着いた曲調のBGMには、心拍数を抑える効果や免疫力が上がる効果があります。そのため、イライラした気分や落ち込んだ心を癒す効果が見込めるでしょう。メンタルヘルス対策の一環として、オフィスBGMを導入する企業も増えつつあります。
コミュニケーション促進
一般的に、図書館のような静まり返ったオフィスでは話しにくいと感じる人が多いです。オフィスにBGMを流すことによって、沈黙を感じにくくなりストレスなく会話できるといえます。とくにコミュニケーションが重視される仕事であればおすすめです。さらに、周囲に聞かれたくない話や連絡事項などもしやすい環境になるでしょう。
集中力を高める
オフィスにBGMを流すことで、業務に不要なノイズを削減できます。これはマスキング効果と呼ばれ、ふたつの音が重なることにより片方の音が聞き取りにくくなるという現象です。つまり、BGMによってパソコンの操作音・書類をめくる音・電話などの会話が相殺されることが期待できます。意識を反らすノイズが削減されることにより、単純作業や知的作業問わず、集中して業務に取り組めることでしょう。
オフィスの雰囲気を和らげる
音楽にはリラックス効果があり、ストレスが軽減できるといわれています。ストレスが軽減されることにより、快適さが高まり一人ひとりが穏やかに業務に取り組めるでしょう。結果、オフィスの雰囲気が和らぎ、疲労の軽減・作業ミスの減少といった仕事の質の向上が期待できます。
時間管理に役立つ
決まった時間に特定のBGMを流すことで、従業員にメリハリをつけ支える効果が期待できます。たとえば、終業1時間前に特定のBGMを流すことで終業までに仕事を終えようという意識をもたせられるでしょう。BGMによって仕事の区切りがつけやすくなり、従業員ひとりひとりの時間管理・業務効率アップにつながるといえます。
企業イメージの向上
オフィスにBGMを流して得られる効果は、従業員だけにとどまりません。穏やかな曲調のBGMを流すことで、上品で落ち着いたオフィスというイメージを来客者に与えられます。商談の際にも役に立つと考えられ、穏やかなBGMは緊張を和らげ、和やかに商談を進められるでしょう。
クラシックの効果は科学的に証明されている?
古代エジプトや古代ギリシャの時代から、音楽は心身に有効な効果をもたらすとされていました。現代においてもストレスの緩和を目的として、音楽療法(ミュージックセラピー)が行われることも。中でもクラシックの効果は大きいとされており、さまざまな研究結果の報告がされています。科学的に証明されたクラシックの効果は下記のとおりです。
リラックス効果
クラシックには“1/fゆらぎ”という、川や風などの自然音や小鳥のさえずりと同じリズムが含まれています。このゆらぎは自然音を聞いているような心地よさを与え、それがリラックス効果につながるようです。また、1/fゆらぎによるリラックスはα波という脳波を発生させます。α波からはβ-エンドルフィンという物質が分泌され、A10神経(ドーパミン神経系)を刺激。幸せホルモンと呼ばれるセロトニンやストレスを軽減させるドーパミン、イライラとした気分を鎮めるアセチルコリンを生み出します。
これらの影響により自律神経のバランスが整い、心身ともに健やかな状態を保つことが可能です。1/fゆらぎが多いクラシック曲の代表として、パッヘルベルのカノンがあげられます。うっとりとしてしまうほどの美しい旋律は、音楽療法に使用されるほど。そのため、テンポよく業務を行いたい場合には不向きであるとも考えられますが、繁忙期なのでピリピリとした雰囲気のオフィスには効果的だといえるでしょう。
また、モーツァルトのアイネ・クライネ・ナハトムジークをはじめとするモーツァルトの楽曲には、規則性と不規則性が混ざり合っています。そのため、リラックス効果はありながらも脳に適度な刺激を与えることができ、適度な緊張感も維持できるでしょう。
リフレッシュ効果
人間の脳は、言語活動・論理的思考を担う左脳と身体的感覚・芸術的活動を担う右脳で成り立っています。仕事では左脳をつかうことが多いようです。さらに、右脳よりも容量が小さいため疲れやすい傾向にあるといわれています。したがって、左脳を休ませることが必要です。歌詞のないクラシックは右脳だけを刺激でき、結果として左脳を休ませることができます。左脳を休ませることで、リフレッシュ効果につながるでしょう。
そのほかの研究結果
イギリスのノーザンブリア大学研究グループでは、クラシックは脳の活性化・記憶力向上に効果があるとの研究結果も。老人ホームでは認知症の改善が見受けられ、血圧を下げる効果が見られたそうです。さらに、アメリカのマサチューセッツ総合病院の研究では免疫グロブリンAという抗体の増加が確認されました。
クラシックをより効果的に業務に取り入れるコツ
クラシックの効果を最大限に活かすコツとして、流すタイミングと流す際の注意点を紹介します。オフィスBGMを常に流すのは少しハードルが高いと感じている場合、紹介するタイミングにのみBGMを導入するのもおすすめです。業務の効率化を図るだけでなく、職場の雰囲気をよくするためにも、効果的にBGMを導入しましょう。
タイミング
時間帯によってBGMのテイストを変える
クラシックは穏やかに流れるような曲から、激しくたたみかけるような曲までさまざまあります。時間帯によってクラシックの曲を使い分けることにより、それぞれの曲の効果を適切に受けることが可能です。たとえば、朝は軽快な曲調で爽やかな気持ちに。昼休憩の時間はリラックスできるように穏やかな曲調を。どうしても眠気が強まる昼休み終わりには、アップテンポの曲調を。このような使い分けで、従業員のモチベーションの維持や気持ちのメリハリをサポートできるでしょう。
タイミング
特定の意識や行動を定着させたいときにBGMを流す
清掃時間の開始や終業時刻まで30分前に特定のBGMを流すことで、従業員全体への意識づけが可能です。とくに休憩終わりにアップテンポの曲を流すことで、休憩と仕事の気持ちの切り替えを促すことができます。時計を確認せずとも、BGMを耳にした従業員全員が時間を意識するでしょう。
タイミング
会議など多くの人の意見がほしい場合に流す
静まり返った会議では、意見をあげることが億劫に感じる人も少なくありません。そのため、BGMを流すことで発言しやすい雰囲気をつくることができます。ピリピリとした強い緊張感のある会議でクラシックを流すと、気持ちをほぐす効果も得られるようです。ただし、会議を真面目な場、緊張感があるべき場と認識している人もいます。会議にBGMを流す際は事前に確認をとるとよいでしょう。
注意点
BGMの音量は60db以下
音量の測定と、実際の響き方や音量の確認は必ず行うようにしましょう。座席やクラシックの曲調によって聞こえ方が異なります。とくに音量測定を行うことで、音量の基準を確認することが可能です。スマートフォンの無料アプリなどにも騒音計があるため、気軽に確認できるでしょう。基準とする音量は60db以下です。40dbは静かなオフィス、80dbは電車の中、20dbはささやき声とされています。会話の妨げにならないといわれる60db以下に設定することで、業務に支障をきたすことなく、BGMの効果を得ることができるでしょう。
まとめ
音楽が人に与える効果は大きいとはいえ、これほどの恩恵があると知っている人は少ないのではないでしょうか。メリットが多いため、BGMの導入は非常におすすめでしょう。とはいえ、BGMをただ導入するだけでは不充分です。音量の調整や定期的な選曲の見直しを行う必要があります。導入して満足するだけではなく、従業員の反応を確認しながら、少しずつ自社に適したBGM導入を進めていきましょう。