病院・クリニックでBGMを流すメリットを紹介
病院やクリニックでは、適切なBGMを流すことで、患者さんやスタッフによい影響を与えられます。また、診療科ごとに効果的な音楽ジャンルは異なるため、それらも合わせて把握したうえでの選曲が大切です。本記事では、病院・クリニックのBGMに焦点を当てて解説をしていくので、事業者やスタッフの人はぜひ参考にしてください。
病院・クリニックにBGMを導入することで期待できる効果
病院やクリニックで音楽を流すことによる効果は、患者とスタッフ双方に多くの利益をもたらします。ここでは、音楽がもたらす具体的な効果について詳しく見ていきます。
患者の緊張感を和らげる
医療機関での待機や診察は、多くの患者にとって緊張や不安を引き起こす要因となります。そこで音楽を利用することは、患者の心理的な負担を軽減するための有効な手段となります。
とくに、1/fゆらぎを含む音が緊張緩和に効果的です。1/fゆらぎとは、自然界の音(雨音、さざ波、小鳥のさえずりなど)に見られるリズムの揺らぎ方を指し、このような音は人間の脳にリラックス効果を与えるとされています。この1/fゆらぎは、クラシック音楽や自然の音を取り入れた音楽にも含まれており、ショパンやモーツァルトなどの名曲に見られることも知られています。
したがって、病院やクリニックで音楽を流す場合は自然の音やクラシック音楽を選ぶことで、患者の緊張緩和につながるのです。
患者のプライバシーを守る
BGMには、音をマスキングする効果があります。これをマスキング効果と呼び、周囲の音や会話を隠すことができます。
診察室などでの医師と患者の会話は、プライバシーを守るためにも外部に聞こえないことが望ましいです。そこで音楽を流すことで、診察室の内部の会話が外部に漏れにくくなり、患者のプライバシーを守れます。とくに診察室の壁やドアが薄い場合、音楽を流すことで雑音を遮断し、より安全に会話ができます。
音楽を選ぶ際には音量や音色に注意し、過剰に音が大きくならないように調整することが大切です。
待ち時間を短く感じさせる
医療機関で患者が最もストレスを感じる時間帯は、待機時間です。診察前の長時間の待機は、患者にとって非常に苦痛となることがあります。
音楽は、待ち時間を少しでも快適に過ごさせるための有効な手段となります。とくに、テンポ感がありリズムを感じさせる音楽を選ぶと、時間の経過が早く感じられやすいです。待ち時間を短く感じさせることができれば、患者のストレスを軽減できます。
ただし、待ち時間の問題を根本的に解決するためには、音楽だけでは不十分です。患者の待機時間の管理や効率的な診療体制の整備も重要な要素となります。
スタッフの作業効率を向上させる
音楽は、患者だけでなく、スタッフにもよい影響を与える可能性があります。医療現場では、スタッフが常に忙しく働いていますが、音楽を利用して仕事の効率や作業環境の改善が可能です。
たとえば、クラシック音楽は、穏やかでリズムのゆったりとしたメロディーが特徴であり、スタッフの精神的な負担を軽減し、冷静に仕事を進めるために役立ちます。とくに会計業務など、精密さを要求される作業において、落ち着いて業務に集中できる環境の整備は重要です。
また、昼休憩中にはイージーリスニングや軽音楽を流すことで、スタッフのリフレッシュを促せます。音楽による環境作りは、スタッフのメンタルヘルスにも寄与し、長時間働くことによる疲労感を和らげる手助けとなるでしょう。
診療科ごとにおすすめのBGMジャンルを紹介
ここからは、診療科ごとにどのような音楽が理想的か紹介していきます。
診療科を問わずおすすめの音楽
医療機関で流す音楽として、最も適しているジャンルはクラシック音楽です。クラシック音楽はリズムが穏やかで、心地よい効果をもたらすことが知られています。
さらに、クラシック音楽には自然界の音に近い1/fゆらぎを含んでいる曲が多いです。これがリラックス効果を促進するため、患者の緊張や不安を軽減するのに効果的です。また、クラシック音楽には、歌詞がないため、聴く人を邪魔することなく穏やかな環境を作り出します。
クラシック音楽以外でも、モダンな楽曲やソロのピアノ演奏、ヒーリングミュージックも非常に人気です。これらの音楽は多くの人々に親しまれやすく、優雅で穏やかな音色が、リラックスした気分を提供します。とくに、ピアノの演奏は繊細で心に響くため、診療室や待合室などで患者にリラックス効果を与える役割を果たします。
ヒーリングミュージックは、音量やテンポが穏やかで心を落ち着ける効果があるため、全体的な雰囲気を和やかに保つことが可能です。
小児科向けの音楽
小児科の診療室では、子どもたちが診察や検査に対して恐怖や不安を感じる場合があります。そのため、子ども向けの音楽を流すことが効果的です。
とくにオルゴールの音色は、子どもたちにとって非常にリラックスできる音として親しまれています。オルゴールのメロディーは穏やかで心を落ち着け、子どもたちの恐怖心を和らげる効果があります。
さらに、オルゴール音楽は眠りを誘う優しい音色をもっているため、診察を受ける前に落ち着けるでしょう。これにより、怖がらずにリラックスした気持ちで診察を受けられます。オルゴール音楽は、とくに診察中や検査の待機中に有効です。
産婦人科向けの音楽
産婦人科では、出産を控えた妊婦さんに対して、心地よい音楽を提供することが重要です。出産時には、妊婦さんがリラックスし、不安を和らげるために音楽を流すことがよくあります。その際、各妊婦さんが望む音楽を事前に聞いておくことが望ましいです。
多くのクリニックではバースプランを推奨し、妊婦さんが出産時に流してほしい音楽を選べます。個々の希望を反映した音楽を流すことで、妊婦さんの気持ちが安定し、出産時の不安を軽減することができます。
また、母親学級などで不特定多数に音楽を流す場合、出産の不安を和らげるようなアップテンポで明るい音楽が理想的です。リズム感のある音楽は、妊婦さんの気持ちを前向きにし、出産に対する楽しみな気持ちを高められます。選曲に工夫を凝らし、妊婦さんにとってリラックスできる環境を提供することが大切です。
リハビリや認知症予防などを専門とするクリニック向けの音楽
リハビリテーションや認知症予防を専門とするクリニックでは、患者が明るく前向きな気持ちで治療に取り組むことが重要です。そのため、リハビリルームでは軽快で明るい音楽を流すのが理想的です。
テンポのよい音楽は、患者のモチベーションを高め、リハビリへの意欲を引き出します。とくに、リズム感がある音楽やポジティブなメロディーを選ぶことで患者がリハビリを楽しく感じ、治療に対する前向きな姿勢を保てます。
一方、診療室や待合室では静かなヒーリングミュージックやリラックスできる音楽を流すとよいでしょう。これにより、リハビリルームに入る前の緊張をほぐし、リラックスした状態で治療に臨むことができます。
まとめ
病院やクリニックでBGMを導入することで、患者やスタッフに多くの利点がもたらされます。音楽は患者の緊張感を和らげ、プライバシーを守る役割も果たします。待機時間を快適に過ごさせ、ストレスを軽減する効果が期待でき、スタッフの作業効率や精神的な負担の軽減にも貢献します。また、診療科ごとに適切な音楽を選ぶことで、より効果的な環境作りが可能です。たとえば、小児科ではオルゴールの音色、産婦人科では妊婦さんの希望に沿った音楽、リハビリテーション施設では明るい音楽が効果的です。音楽を上手に活用することで、医療機関の雰囲気が一層快適になり、患者やスタッフの満足度を向上させられます。