飲食店のBGMがお客さんに与える心理的効果について解説
店舗BGMは、お客さんに対してさまざまな心理的効果を与えます。BGMを上手に活用すれば、売上アップも夢ではありません。しかし、そのためにはBGMがお客さんにどのように働きかけるのか知っておかなければいけません。そこで今回は、BGMの具体的な効果や選曲のポイントについて詳しく解説します。
BGMがお客さんに与える心理的効果
飲食店のBGMを適切に選ぶことにより、店内の雰囲気やお客さんの行動に大きな影響をおよぼし、顧客満足度の向上や売上の増加にもつながります。BGMがもつ心理効果には、主に「マスキング効果」「イメージ誘導効果」「感情誘導効果」の3つがあります。
マスキング効果
マスキング効果は、BGMを使って周囲の音を隠す効果であり、飲食店においてとくに重要です。飲食店では、隣のお客さんの会話や店員の食器を運ぶ音、厨房からの音などが気になることがあります。これらの音は、リラックスした状態での食事や会話を妨げる場合があります。
しかし、BGMで飲食店内の雑音を覆い隠すことにより、心地よい空間をつくりだせるのです。
イメージ誘導効果
BGMには、お店のイメージをお客さんに伝える効果もあります。飲食店は、コンセプトや内装、メニューなどとともに、音楽を通じて特定のイメージ演出が可能です。たとえば、店の雰囲気やターゲット層に合わせてBGMを選ぶことで、店のイメージを強化し、売上アップにつなげられます。
また、高級感や洗練された印象を与えたい場合、クラシック音楽やジャズのような落ち着いた音楽が適しています。これらの音楽は、上品で優雅な雰囲気を醸し出し、飲食店に対するよい印象を与えることでしょう。逆に、カジュアルな雰囲気や活気のある空間を求める場合は、ポップやロック音楽などのアップテンポな音楽が効果的です。
感情誘導効果
感情誘導効果は、音楽が人々の感情や行動に影響を与える力を指します。飲食店では、音楽によってお客さんの感情や行動を誘導することが可能です。
音楽は、心地よい空間を提供して食事を楽しむ気分を高めるだけでなく、お客さんに対して特定の行動を促すこともできます。たとえば、穏やかなジャズやボサノヴァなどのゆったりとした音楽は、リラックスした雰囲気をつくりだします。このような音楽は、お客さんが長時間リラックスして過ごすことを促すため、長居してほしい場合に効果的です。
一方、アップテンポの音楽、たとえばポップやエレクトロニカなどは活気ある雰囲気をつくりだします。このような音楽は、回転率を高めたい場合や、賑やかな雰囲気を求める場面に適しています。
飲食店のBGMの選び方
ここからは、飲食店のBGMを選ぶ際に考慮すべき5つのポイントについて解説します。
店舗のコンセプトにあわせる
店舗のコンセプトや雰囲気に合ったBGM選びは、非常に重要です。音楽はその店のイメージを強化する手段として効果的に働きます。
たとえば、元気で明るい雰囲気を演出したい場合、ボサノヴァやアップテンポなジャズなどのリズムのある音楽が適しています。こうした音楽は、お客さんが長時間利用したくなるような空間をつくりだせます。
一方で、洗練された高貴な雰囲気や格式の高い印象を与えたい場合には、クラシック音楽が有効です。クラシック音楽は、落ち着いた雰囲気を醸し出し、内装や店のコンセプトと調和することで、高級感や品格を演出します。
お客さんにとってほしい行動で選ぶ
飲食店でのBGM選びには、顧客の行動に影響を与える「感情誘導効果」を活用することも重要です。音楽のテンポや雰囲気によって、お客さんに期待する行動を促せます。
たとえば、回転率を高めたい場合には、アップテンポな曲が効果的です。ファストフード店やランチタイムの混雑を解消したいカフェなどでは、速いテンポの音楽を流すことをおすすめします。
逆に、客単価を上げたい場合や、ゆったりとした空間でくつろいでほしい場合には、スローテンポの音楽を選ぶと効果的です。穏やかなジャズやボサノヴァなどの音楽は、お客さんが長く滞在したくなるリラックスした雰囲気をつくりだし、食事をゆっくり楽しんでもらえます。
時間帯にあわせる
営業時間帯に合わせて音楽のテンポやジャンルを変えることで、その時間帯に最適な空間をつくりだせます。
たとえば、朝の時間帯には、軽快で活力を与える音楽や穏やかでリラックスできるメロディが向いています。この時間帯には、ゆっくりと朝食を楽しむお客さんに落ち着いた雰囲気を提供でき、活気をもたせるための音楽選びが効果的です。
昼のランチタイムでは、活発で賑やかな雰囲気を演出するために、ポップやアップテンポの音楽が適しています。お昼の時間帯の賑やかな雰囲気に合わせた音楽は、食事を早く終わらせたいお客さんにも適応し、活発な空間をつくりだします。
午後から夕方にかけては、仕事帰りのお客さんがリラックスできるように、落ち着いたジャズやボサノヴァのようなゆったりとした音楽が理想的です。この時間帯に合わせた音楽選びは、時間帯ごとの雰囲気にマッチした空間づくりにつながります。
顧客の年代にあわせる
来店するお客さんの年代に合わせた音楽選びも、売上アップのために大切です。顧客の世代ごとに音楽の好みが異なるため、それに合わせたBGMを流すことで、より快適で心地よい空間を提供できます。
たとえば、年配のお客さんが多い飲食店では、クラシックやジャズなど、落ち着いた音楽が好まれるケースが多いです。こうした音楽はリラックスした雰囲気をつくりだし、ゆったりとした食事の時間を演出します。
一方で若年層が多い飲食店では、トレンドに合わせたポップミュージックやアップテンポな曲を流すと、活気ある雰囲気がつくりだせます。若年層のお客さんには、明るく元気な音楽が親しみやすく、エネルギッシュな空間を提供するのに適しています。
顧客の年代に寄り添った音楽選びは、店舗の印象をよくし、お客さんの満足度を向上させる効果があります。
イベントにあわせる
飲食店では、季節のイベントや特別なイベントに合わせてBGMを選ぶことで、特別な空間を提供できます。
たとえば、クリスマスシーズンにはクリスマスソングやクラシック音楽を流すことで、温かみのあるロマンチックな雰囲気を演出できます。また、ハロウィンの時期には、ハロウィンのテーマソングやホラーサウンド、アップテンポなダンスミュージックなどを選曲すると、楽しく賑やかな雰囲気をつくりだせることでしょう。
BGMを流す際の注意点
飲食店でのBGM選択は、雰囲気つくりや顧客の体験に大きく影響しますが、注意すべき点もいくつかあります。以下の2つの重要な注意点を考慮することで、音楽を効果的に利用しつつ、法律や顧客の快適さを守ることができます。
著作権に注意する
音楽には著作権が存在するため、商業施設で使用する際には注意が必要です。著作権で保護された楽曲を無断で流すことは、著作権法に違反します。飲食店でBGMを流す際は、JASRACやNexToneなどの著作権管理団体と契約し、使用料を支払う必要があります。
ストリーミングサービスやCDをそのまま使うことは商用利用として認められていないため、違反すると罰則を受ける可能性があるのです。著作権料を支払いたくない場合や手軽に音楽を使用したい場合は、著作権フリーの音楽を選ぶ方法があります。
著作権フリーの音楽は、たとえば著作権者が亡くなってから50年以上経過した楽曲や、著作権者がフリーとして提供している楽曲が含まれます。また、著作権フリーの音楽を提供するサブスクリプションサービスも存在するので、音楽選びで悩んでいる場合はこれらを活用するのが賢明です。
音量に気を配る
BGMの音量も重要な要素です。適切な音量は、音楽を楽しみながらも、顧客が料理やサービスに集中できる40〜50dB程度が理想的です。この音量範囲であれば、会話の妨げにもならず、リラックスできる空間を提供できます。
逆に、音量が60dBを超えると、地下鉄の車両と同じくらいの音量となり、うるさくなり過ぎて会話がしづらくなる可能性があります。一方で、音量が30dB以下だとマスキング効果が薄れてしまうため、音量の調整が必要です。
店舗の広さや雰囲気によって音楽の聴こえ方は異なるため、実際に流してみて、場面に応じて微調整を行うことが大切です。音量のバランスを保つことで、心地よい空間をつくりだし、お客様にとって快適な環境を提供できます。
まとめ
飲食店のBGMは、店内の雰囲気をつくりだし、顧客の行動に大きな影響を与える重要な要素です。音楽には「マスキング効果」「イメージ誘導効果」「感情誘導効果」があります。これらをうまく活用することで、リラックスした空間を提供し、売上向上にもつなげられます。BGM選びでは、店舗のコンセプトや時間帯、顧客の年代に合わせた音楽選びがポイントです。また、著作権や音量にも配慮し、快適な環境づくりを心掛けましょう。適切なBGM選択が、店舗の魅力を引き立てます。